中学から6年間の不登校・ひきこもり経験があり、「フリースペース」の存在で状況が変化し、19歳で高卒認定(大検)を取得し、埼玉工業大学、明治大学大学院を卒業する。
そして、ひきこもり当事者の経験を生かして、不登校・ひきこもりに悩む若者の支援をはじめ、「アリスの広場」で仲間を作り、次へのステップへ進めるサポートをしている、とっても心優しい佐藤さんにインタビューさせていただきました。
フリースペースをはじめられたきかっけ
ライター柿沼
「今回はお忙しいなか、時間を作っていただいてありがとうございます。学生時代に秩父にあるフリースクールで、毎週こども達と一緒にゲームしたりご飯作ったりと、簡単なボランティアをしていた事があるのですが、そちらと比較すると、とても広くて立派な建物なのでビックリしました(笑)」
佐藤さん
「いえいえ、そんなことないですよ。以前は亀里町という所にあるビルでやっていたのですが、ご縁もあり、現在はこちらの建物の所有者の方に一部をお借りして運営しています。」
ライター柿沼
「アリスの広場は始められてどれぐらいになるんですか?」
佐藤さん
「2014年9月にはじめたので、この9月で5年目になりますね。(2018年取材)」
ライター柿沼
「立ち上げようと思った経緯って、どんな感じなんですか?」
佐藤さん
「ちょっとややこしいんですけど、もともとボクが10代の頃に不登校になって、渋川の大工さんが民間でやっていた群馬のパス会というフリースペースと、埼玉県所沢市にあったバクの会の2つにお世話になり。そのおかげもあって高校に一度もいったことがないのに、高校認定試験を取って、20歳で大学生になり、大学院まで行って、東京で就職したんですけど、そこの営業職の環境がとにかくすごくて・・・毎日怒鳴り散らかされて、半年でダメになっちゃって。」
ライター柿沼
「えええええっ?営業!?引きこもりから、営業!?ヤバ!(笑)何系の営業だったんですか?」
佐藤さん
「店舗用のフローリングなんかを扱っているような会社でしたね。公務員試験なんかを受けたりもしたんですけど、ちょうどリーマンショックの直後だったんでダメで。そのときに丁度、群馬のパスの会から『最近どうしてるっ?』と、たまたま手紙が来ていて、じつは仕事を辞めっちゃってと話したら、ぼくが居たときは10代ぐらいの子の居場所だったんですけど、それからまた発展してて20代30代の子がいま集まっていて『場所もあるから来てみて』といわれて、そこからお仕事体験とか単発アルバイトをやって自信を取り戻して、再度就職しました。」
ライター柿沼
「なるほど、営業は激しい系の会社多いですからね・・・気持ちがタフじゃないと、心折られちゃいますよね。僕も10代の頃は佐藤さんと同じような感じなので、学生時代も社会人になってからも、コミュニケーション能力が必要不可欠感がビシビシする『営業』や『接客』は絶対無理だと思ってましたよ・・・そんな営業職に飛び込むなんて・・・すごい。でも、自信を取り戻せてよかったですね、縁ですね。」
佐藤さん
「そうですね、その後も『アリスの森』というペット霊園を運営されている方と知り合いになり、チラシ作ったりとか、パンフレット作ったりとか、お手伝いしながら、様々な方とつながっていき、『アリスの広場』をすることになり、とても縁には恵まれていると思います。」
みんな集まる「アリスの広場」
ライター柿沼
「最初から、人は沢山集まったのですか?」
佐藤さん
「3ヶ月ぐらいは人が来なかったですけど、半年たったぐらいから実は新聞で取り上げてもらったんですね、朝日、読売とかに取り上げてもらったので、それがきっかけで結構ボチボチと増えたって感じですかね。」
ライター柿沼
「今現在、全部で何人ぐらいいるんですか?」
佐藤さん
「入れ替わりは結構あるんですけど、定期的に来ている子だと大体25人ぐらいですかね。」
ライター柿沼
「めっちゃいますね。2014年に立ち上げてトータルだと何人ぐらいになるんですか?」
佐藤さん
「相談だけとか1.2回来ただけっていう子もいるんですけど、全部カウントはしてないですけど、3.400人前後ぐらいにはなるんですかね。」
ライター柿沼
「すごいですね、これからも、そういった子が気軽に遊びに来れるスペースとして継続し続けてほしいです。いやーいいっすねー。」
アートとアリス
ライター柿沼
「サイトを拝見したのですが、こちらの『アリスの広場』は、アートを積極的に取り入れているのが特徴的なんですか?」
佐藤さん
「そうですね、アーツ前橋という美術館がありまして、水曜日は休館日なんですが、実は特別にあけてもらっています。メンバーの中には慣れた同士だったら大丈夫なんですけど、知らない人がいると調子が悪くなる子もいるので特別に対応していただいています。」
ライター柿沼
「わお!貸切ですね!」
佐藤さん
「定期的に集まって美術館を見学する『ゆったりアーツ』は、展示内容が変わる3ヶ月おき位のペースで行っています。基本的にみんな2~3時間かけてゆっくり、自分のペースで色んなところをみてるって感じですね。」
ライター柿沼
「いいですね、そういうのなかなか体験できないですね。」
佐藤さん
「BS館のサポーターというボランティアにも、メンバーが4人程度参加して、作品のお知らせ、ダイレクトメール、袋詰め。あとはちょっとした図書館みたいなコーナーがあるんですね、そこの本の整理だったりとか、新しく来た本のラベル貼りなどの作業をしています。」
ライター柿沼
「わー、楽しそう、僕もやりたい。」
佐藤さん
「このアイデアは、現代アーティストの滝沢達史さんが発案してくださり。毎月アリスの広場に来てくださって、美術部を開催していただいています。その他にも、森を散歩する「ひきこ森」などの活動にも協力してくださっています。」
ライター柿沼
「ひきこ森(笑)面白い!」
佐藤さん
「音楽やイラストとか漫画が結構得意な子が多くて、滝沢さんが担当する美術部の中で習ったりして楽しんでいます。もともと滝沢さんが美術系の学校をでた後に、10年間養護教員をやっていた方なんです、ただ学校のやり方というかシステムがあんまりよくないって言うんで、アーティストに戻ったっていう経緯もあるので、とても助かっています。」
ライター柿沼
「いいなー、10代に戻って、アリスの広場きたい(笑)」
今後の展望
ライター柿沼
「とっても楽しそうなのですが、何かこう今後の目標というか、こうなったらいいなみたいなものってありますか?」
佐藤さん
「お仕事体験の場とか、バリエーションを含めてそういうのをもっと増やしていきたいっていうのがありますね。」
ライター柿沼
「フリースペースに来て、そのちょっと先の部分ですね。」
佐藤さん
「そうです、現在は協力してくれている桑畑の管理などの農業体験で、しっかりアルバイト代もいただいています。」
ライター柿沼
「いいですね。」
佐藤さん
「ただ、直前までやってみたいって言ってても、直前になると調子が悪くなっちゃったりもするので、理解のある、例えばドタキャンオッケーとかそういう理解があるところじゃないと厳しいんですよね。私も以前そうだったのですが、単発のお仕事体験やアルバイトがあると、それだけでプレッシャーがあるので・・・。」
ライター柿沼
「寛容な受け皿ってなかなか、んー・・・。ビジネス感覚で言うなら、払う側としたら1,000円払うなら、1,000円以上の仕事をして欲しいですよね。」
佐藤さん
「ボランティアだったらそれなりにあるんですけど、少なくてもいいからお金をってなるとなかなか難しいですね。コンビニとかのアルバイトをやっている子もいたのですが、凄く大変で逆に嫌になってしまってっていう子も多いんですね。ただ、できるだけ理解のある方を見つけられるように、アプローチしていきたいと思います。」
ライター柿沼
「僕も、いい方や情報があれば佐藤さんにお伝えします。こういった、みんなが笑顔になれるようサポートしていくのは大事だと思っているので、応援しています!本日はありがとうございました!!」
佐藤さん
「こちらこそ、ありがとうございました。」
撮影/柿沼博基