陸上競技や、格闘技など、ほとんどのスポーツが男女別々で行われていますが、「ボートレース」は女性と男性が同じフィールドで競い合い、水上の格闘技とも称されるとても厳しい世界でご活躍されています。
埼玉県の荒川沿いにあるボートレース戸田や、各地のボートレース場でレースをし、勝負に命をかける「LiFE」について、お話しを伺いました。
ボートの世界に飛び込んだきっかけ
ライター柿沼
「KUMAGAYALiFEの柿沼です、本日は宜しくお願いします!」
中田夕貴さん
「よろしくお願いします!」
ライター柿沼
「まず、ボートをはじめたきっかけをお伺いしてもよろしいですか?」
中田夕貴さん
「私の兄もボートやっていて、年は3つ離れてるのですけど、その影響は少なからずあると思います。ボートの世界でいうと5年先輩ですね。」
ライター柿沼
「お兄さんもボートレース選手なんですね、すごい運動神経のいい兄妹ですね。そうすると、ボートレーサー養成所に入るタイミングがちょっとお兄様とずれてる感じですか?」
中田夕貴さん
「そうですね、学校には年齢制限があって、16歳~30歳までなのですが。実は一番初めに「お兄ちゃんが受けるなら私も受ける!」といって、高校の時に一度兄と一緒に受験したのですが、その時は兄だけ受かって、私は進学して、その後普通に就職したんですよね。」
ライター柿沼
「一度社会人をご経験されているんですね、そこから再度チャレンジしたのはなぜなのですか?」
中田夕貴さん
「普通に1ヶ月頑張って働いて貰うお給料の額を、兄は1週間程度で稼いでいる姿が、夢があるなと思ったんですよね。そして、22歳でもう一度受験して学校にはいりました、」
ライター柿沼
「確かにそれは、夢がありますね!僕も、あと5年早かったら・・・、でも運動神経ないので無理か・・・(笑)ちなみに、どのぐらいの人数の方が応募されるんですか?」
中田夕貴さん
「私の時は、確か倍率が30倍ぐらいで、合格者は40人ぐらい、卒業したのは29人ぐらいですね。」
ライター柿沼
「30倍!!かなりの人数が応募されるんですね、その筆記や体力審査など狭き門を潜り抜けた40名の中でも、卒業するまでには脱落される方も、一定数いらっしゃるんですね・・・。」
中田夕貴さん
「結構キツイんですよ(笑)みんな体力試験をパスしたメンバーなので、体力が理由って事はないと思うのですが、怒られる事も多いですし、どちらかというと精神的に苦しいですかね、携帯も1年間ないですし(笑)」
ライター柿沼
「精神的・・・、うん100%耐えられないと自信があります(笑)しかも、外界とも一切遮断されるんですね・・・。」
中田夕貴さん
「ただ、手紙はありましたね、家族と手紙を交換したりしましたね。」
ライター柿沼
「なるほど、その状況下での、手紙でのご家族とのやりとり、すごい天の糸ですね。」
中田夕貴さん
「はい、いつも支えてくれた家族には感謝しています。」
命がけのボートの世界
ライター柿沼
「学校の厳しさを乗り越えて、デビューされてからはご苦労されたのですか?」
中田夕貴さん
「しましたねー。デビューしたては、やっぱり勝てないです。エンジンやプロペラは自分では選べないので、抽選で引き当てたものをしっかり整備して、本番のレースで精一杯やるだけなのですが、なかなか難しいですね。なので、レース場でも頑張りますけど、レース行く前に「運気」を集めるようにはしていますね。」
ライター柿沼
「験を担ぐような感じですか?イチロー選手など、スポーツ選手はよくやるみたいですよね。」
中田夕貴さん
「そうですね、部屋のレイアウト変更や掃除したり、休日にパワースポット巡ったりもしてますね。レース前にできる事は、意識してやるようにしています。」
ライター柿沼
「初勝利した際は、3年間のボート生活のなかでも一番嬉しかったですか?」
中田夕貴さん
「初勝利・・・、もちろんその瞬間は嬉しいんですけど、一瞬なので。やっぱり、一節間通して成績がいい時はずっと楽しいですね。1日だけなのか1週間だけなのかですかね。あと、初優出といって、予選を突破して、初めて優勝戦に乗れた時は1週間ずっと楽しかったですね。」
ライター柿沼
「なるほど、一つ一つの勝利の積み重ねなんですね・・・。」
男女一緒のフィールドで危険と隣り合わせの真剣勝負
ライター柿沼
「ボートの世界は、競輪、陸上競技などと違い、男女が同じ土俵で戦っているのが特徴的だなと感じるのですが、男女比はどれぐらいなのですか?」
中田夕貴さん
「今、全体で選手が約1,600人ぐらいいるのですが、200人ぐらいが女子で。A1、A2、B1、B2というランクが分かれているのですが、現状ですとA1は男性の比率が高いかもしれません。」
ライター柿沼
「男女で違いはありますか?」
中田夕貴さん
「一番大きいのは、体重ですかね。体重の下限に制限があって、男性51.0kg、女性47.0kgなのですが、その3kgの差がとても大きくて、ボートの進み方が全然違います。」
ライター柿沼
「軽い女子の方が有利ということですか?」
中田夕貴さん
「その部分ではそうなのですが、やはり男性の方が女子に比べて力があり、ターンなどに差がでるので、長所短所ありますね。」
ライター柿沼
「なるほど、逆に、それも考慮した体重下限の差でもあるのですね。でも、男子で51Kgって結構大変そうですね。」
中田夕貴さん
「そうなんですよ、男性選手は苦労していますね。本当に1kg違うだけで、タイムが変わってくるので・・・。その点は女子でよかったと思いますね。」
ライター柿沼
「ちなみに現在、中田さんはどのランクなのですか?」
中田夕貴さん
「今はB1ですね。比率でいうとB1が一番人数が多くて。ランクを決める基準が点数制になっていて、レースの着順によって1位2位3位・・・と得られる点数が変わり、半年間の点数合計をレース数で割った平均値でランクが決まります。B1が大体3点~5点ぐらいですね。」
ライター柿沼
「ハイレベルの中での競争だと思うので、大変ですね。」
中田夕貴さん
「ランクによって走れるレース数も変わってくるので、ランク上げていきたいですね。実は、この半年間で5点以上を取って、次の期間ランク上げたかったんですが、前期にケガしちゃったんですよね。」
ライター柿沼
「えっ、怪我!?」
中田夕貴さん
「レース中に落水してしまって、後続からきたボートに轢かれて右膝を骨折してまって・・・。。」
ライター柿沼
「えーーーーー!!落ちて、轢かれて、骨折・・・。ボートの世界だと結構そういった事はあるんですか?」
中田夕貴さん
「そうですね、骨折ぐらいだったら結構ありますね。それで、3ヶ月くらい怪我で休んだので、点数が思うように伸びなくて・・・。今、やっと戻ってきた感じですね。」
ライター柿沼
「怪我怖いですね・・・。」
中田夕貴さん
「私はその瞬間の事は覚えてないので恐怖心はないのですが、復帰後になかなか勝てなくて大変でしたね。私よりも、衝突した選手の方が怖かったと思いますね。」
ライター柿沼
「なるほど・・・。100%怪我が完治されて、男性に負けないぐらいA1でご活躍するのを期待しております。」
中田夕貴さん
「そうなりたいですね、負けず嫌いなので(笑)」
オンのためのオフ
ライター柿沼
「それにしても今日も熊谷は暑いですね・・・。熊谷にはたまに帰られたりするんですか?」
中田夕貴さん
「よく帰ってきてますよ、プライベートは地元の友達と遊ぶことが多いですね。レース期間が終わると1週間連休だったりしますし、フライングなど違反をしてしまうと、1ヶ月レースに出場できないので、まとまった休みが取れます(笑)」
ライター柿沼
「1ヶ月もですか!?フライング厳しいんですね・・・。オンオフは切り分けるタイプですか?」
中田夕貴さん
「切り分けないですね。オンの為のオフだと思ってオフを過ごすので、旅行とか行ったりするのも、すごい全力で楽しむんですけど、次のレースで頑張る為に今楽しむみたいな気持ちで行きますね。」
ライター柿沼
「オンの為のオフ、なんかカッコイイです!僕も実践します!」
中田夕貴さん
「ぜひ、お休みの日にボートレース場へも足をお運びくださいね!」
ライター柿沼
「もちろんです!僕はオフの為のオンという・・・お仕事したくない人間なので(笑)オフを大いに活用して遊びに行きます!昔、僕の散歩コースだった、ボートレース戸田から・・・まずは攻めてみます!」
中田夕貴さん
「お待ちしております。」
ライター柿沼
「本日はお暑い中、ご協力ありがとうございました。(8月上旬インタビュー)」
レース出場予定:中田 夕貴選手
撮影/柿沼博基