LiFE.013「すべての人がおなじ法のもとで」滑川友理

滑川友理
介護福祉士として働きながら、2017年に性的少数者によるNPO法人「RAINBOW茨城」を立ち上げ、2019年には水戸市議会議員選挙で初当選された滑川友理さん。

性的マイノリティーである事を公表し、風当たりの強さを感じながらも、人権活動に積極的に取り組まれている滑川さんに、人権活動での思いや、今後の展望などおききしてきました。

(取材/ライター ゆるいてんちょう)

市議会議員になったきっかけ

ゆるいてんちょうライターゆる

「本日はどうぞよろしくお願いします。」

滑川さん滑川さん

「よろしくお願いします。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「滑川さんはもともと介護のお仕事をされていて、2019年4月の選挙で市議会議員に当選されて市議になられたという事ですが、議員を目指したきっかけは何だったんですか。」

滑川さん滑川さん

「そもそも正直あまり政治に興味がなくて(笑)。典型的な若者の無関心で、誰がやっても一緒でしょうというところがありました。介護士以外に音楽活動と、茨城県の人権教育講師としてLGBTとか、性的マイノリティーに関する人権を担当していて、各行政の職員や教育関係の先生方向けの研修の講師をやっていたんです。」

笑顔の滑川友理さん

ゆるいてんちょうライターゆる

「3足のわらじ!お忙しそうですね。」

滑川さん滑川さん

「そうなんです。やっていたんですが、一人の力って限界があると感じました。他の県に行くとNPOなどの組織としてきちんとやっているところもあるのですが、地方色の強い茨城ではそうした活動に保守的な部分があると感じて、啓発・相談・居場所づくりの3つの活動をしていける組織として、2017年にNPO法人RAINBOW茨城を立ち上げました。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「さらに忙しそう!」

滑川さん滑川さん

「当時は介護のお仕事を中心にそれらの活動もしていたので、やりたいことを見失っていたのですが、そんなときに知人から、半年後に選挙があるがどうかとお話をいただいて。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「さらに選挙ですか!?」

滑川さん滑川さん

「当時は見た目も奇抜だったし、こんな政治家いないでしょうという感じだったのですが、その後少し考えて、ぎりぎりになったときに、やりもしないで断るのも違うかなと思ったり、水戸の市議会をのぞいたら高齢の議員の方が沢山いて、もちろんベテランにはベテランの良さがありますが、水戸は茨城の県庁所在地でもありますし、人口も多い、そうしたことから、多様な人材を受け入れて生かしていかなければと感じました。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「そうなんですね。」

滑川さん滑川さん

「多様な人材、多様な意見、多様な人々って何?と思った時に、議員らしいというところに足並みをそろえるのではなく、28人の議員の内1人くらい議員らしくない議員がいてもいいのではないかと思ってやってみることにしました。それまで付き合っていた友人も政治には興味なかったのですが、私が選挙に出ることをきっかけに手さぐりで協力してくれて、関わっていくと感心が高まっていくのを感じました。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「すごい責任感とバイタリティーですね!周囲の方が推したくなるのも分かります!」

滑川さん滑川さん

「父が政治に絡んでいる事もあって、小さいころから政治が身近だった部分もあるのですが、自分から政治家になりたい議員より、選ばれる議員の方が、使命感をもって周りからの声をひろって届けることができるのではと感じていました。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「インスタなども拝見しましたが、選挙活動中も周りを巻き込んで、とても生き生きと活動されているのが印象的でした。若い人の選挙というかんじがして魅力的だなと思いました。」

滑川さん滑川さん

「インスタは本当にフランクにやっているので恥ずかしいですね(笑)。」

大笑いする滑川友理さん

LGBT当事者としての思い

ゆるいてんちょうライターゆる

「そうした一方で、若い事や、女性である事、LGBTを公表されていることなど、風当りの強い部分もあったのではないですか?」

滑川さん滑川さん

「多々ありました。ご挨拶に回っても、容姿が男か女かわかりにくい事から拒否をされてしまったり。自分はそういう事には慣れていたのですが、介入してくださった方が怒ってトラブルになるのを目の当たりにした時には申し訳ない気持ちになったり、当選してからも、すれ違いざまに同性愛反対だからなといきなり怒鳴られたりという事もありました。一般人から公人になったという事は、自分が相手の事を知らなくても市民の方は知っていて、見つければ言いやすい立場になったという事なんだなと感じています。」

真剣な滑川友理さん

ゆるいてんちょうライターゆる

「確かに、議員さんになるということは、それまでよりいろんな意見を頂くでしょうし、中にはかなり攻撃的な人もいそうですね…。」

滑川さん滑川さん

「自分にとっては、そもそも幼稚園の頃から女性が好きだという事が普通の事だったのに、LGBTや性的マイノリティーである事を政治利用しているという批判や、お前のせいで少子化につながる、伝統的な家族の形態を崩す気か、といった批判も受けます。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「そういった攻撃的な意見に対してはどう思われますか?」

滑川さん滑川さん

「個人的には率直に傷つく部分もありますが、何でこの人はこんな言葉を私に言うんだろうと考えた時に、その方もその方なりの人生を歩んでいて、その経験とか体験に基づいて自分の意見を述べているわけですから、悪い事ではないと思っています。理解できないのも仕方がないし、もし身近に当事者がいたら感覚も変わったかもしれないけれども、30年前の世の中の背景をみても今のようにオープンではなかったでしょうし、知る機会がなかったと思います。そのような方の中には、少子化や家族の体系を崩してしまうといった恐怖感をおぼえるようなイメージを持っている方も多くいます。そうした批判的な意見に対して政治家として出来ることは、対抗することではなくて、なぜそう思うのかと耳を傾けて、それが誤解であればそれを解いてわかり合うことにつなげる事だと考えています。」

滑川友理さんの真剣なまなざし

ゆるいてんちょうライターゆる

「ご自身も嫌な思いをする事が多い中で、素敵な考えですね。政治家になる以前にはLGBTである事で生きづらさを感じたことはありますか?」

滑川さん滑川さん

「福利厚生にフェアじゃないというのは社会人になってからすぐに感じました。パートナーやパートナーの親の看護休暇・介護休暇など、異性間の夫婦だと自然と取得できるのにそうではなかったり、結婚休暇や結婚祝い金、冠婚葬祭、扶養の問題など社会的な制度の問題は多く感じます。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「確かに、いざというときに制度として保証されているといないとでは行動や、選択の幅が全然違いますよね。」

滑川さん滑川さん

「また、LGBTについて理解するよと言ってくれる人も多くいますが、それもちょっと視点がずれていると感じます。セクシュアリティーって流動的で、線引きの難しいものだと思いますが、異性愛者とそうじゃない人と分けたうえで、理解してあげているという感覚で接する方もいて、悲しく感じることもあります。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「そういったことは幼少期から感じていましたか?」

滑川さん滑川さん

「それこそ小学校に入ると女の子同士で結婚できるのかなという思いや、中学校に入ると自分には他の人に認められるような未来がないのかなという思いから、反抗期がひどく出たりしました。今ではありえないのですが、当時は性的マイノリティーに関して先生方への教育もなされていなかったので、先生方からも性的マイノリティーである事をからかわれたりもしました。大人に言われることで強く悩んでしまったり、大人への反発が強く出たりした部分もあると思います。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「教育の問題は大きいかもしれませんね。近年、男らしい女らしいという事に関してフラットになってきているのを感じる一方で、自然と生活の中に強く根付いている男らしい女らしいという価値観はありますよね。」

滑川さん滑川さん

「そうですね。例えば、男性だって弱気になる事があるとしても、男だから泣くなとか、強くなくてはならないみたいなことは教育のなかで育ってきた価値観だと思いますが、どうなのかなと思います。」

LGBT当事者としての思い

ゆるいてんちょうライターゆる

「そういった意味で、30代で議員になられて、様々な世代や立場のお気持ちがわかる滑川さんが政治家として活動される意味って大きいと思うのですが、今後の展望を教えてください。」

滑川さん滑川さん

「日本単位で考えると、すべての人が同じ法の下で、サービスや制度、法律が使えることを強く望んでいます。選択肢があるという事がすごく重要だと考えています。選択肢があれば自分の生き方にも責任が持てるし、志高く生きていけますが、今は選択肢がすごく狭い人々もいらっしゃるのが現状です。なおかつ住んでいる場所によって、幸せになれる自治体とそうでない自治体があって、そうした地域差も良くないのではないかと思っています。」

すべての人がおなじ法のもとで

ゆるいてんちょうライターゆる

「とてもすばらしいですね。」

滑川さん滑川さん

「茨城県ではパートナーシップ制度が始まりましたが、日本レベルで進めばいいなと思います。小規模で考えたときも目の前の事に対応しなきゃという事に目が向きがちですが、どんな街にしたいかと考えたときに、多様性を受け入れること、宗教の違い人種の違い障害の有無、性別の違いなどあると思いますが、いい街にしたいという漠然とした思いを掘り下げていくと、多様な方々を尊重して、一緒に生活していく事が結果的に組織、地域、経済の活性化につながると思います。将来的にはLGBTという言葉がなくなって、人が好きというのはみんな同じでしょという世の中になればいいなと思います。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「すてきな考えですね。日本単位での法整備となると、滑川さんご自身もゆくゆくは国の政治を動かしていこうというお気持ちですか?」

滑川さん滑川さん

「どうでしょう(笑)。時々そういう質問もいただくのですが、そもそも政治家になりたいというよりは、こういう街にしたいという思いをかなえるためのツールが市議会議員だったので、それこそ市単位ではなくもっと大きな単位で取り組まなければならないと強く思えば次のステップに進むこともあると思いますし、仮に議員ではなくて市民団体でいた方が動けると思えばそういう選択肢もあると思います。目標を達成したい気持ちはぶれずにあるのですが、そのために議員にこだわるかというと今の時点ではそんなこともないのかなと思います。」

ゆるいてんちょうライターゆる

「確かに、大切なのは目的の達成であって、そのために的確に手段を選んでいく柔軟さって大事ですよね。とてもお勉強になりました。本日は大変貴重なお話ありがとうございました。」

滑川さん滑川さん

「ありがとうございました。」

取材・文/ゆるいてんちょう
撮影/柿沼博基

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滑川友理
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