​LiFE.009 「彫刻家としていきる」浅野暢晴

浅野暢晴とトリックスター君
数多くの彫刻を制作されている「彫刻家」​浅野暢晴さん。

埼玉県本庄市、美里町、神川町、上里町で2018年11月2日(金)-11月18日(日)に行われた『こだま芸術祭』や、群馬県中之条町内の6つのエリア、中之条伊勢町、伊参、名久田、四万、沢渡暮坂、六合で、2019年8月24日(土)-9月23日(月祝)の31日間で行われる『中之条ビエンナーレ』など、多くの芸術祭に出品されています。

彫刻家になるまでの経緯や、代表作トリックスター君のお話など、彫刻家として生活されている浅野さんにインタビューさせていただきました。

(取材/ライター柿沼博基)

トリックスター君

彫刻家、トリックスターへの道程

ライター柿沼ライター柿沼

「今回、こだま芸術祭に出品されていたトリックスター君と触れ合って、いてもたってもいられなくなり、突然インタビューのお願いをしてしまい、すいませんでした。トリックスター君って、すごい可愛い存在すぎて・・・。」

浅野暢晴浅野さん

「はははは(笑)ありがとうございます。」

ライター柿沼ライター柿沼

「まず、どういった経緯で、現在トリックスター君を製作するまでに辿り着いたのか、簡単にお伺いしてもよろしいですか?」

浅野暢晴浅野さん

「元々は、絵を描いていて、最初は美術で教師になろうと大学行く時に教育学部に入ったんですけど、その後彫刻に出会い、国宝の土偶を国立博物館で見て大きな衝撃を受けて。それまで彫刻ってどちらかと言うと西洋の物っていうか、あんまり身近な物じゃないイメージだったんですけど、その土偶を見た時に、自分にとって身近と言うか、自分の血の流れの中にそういう立体を作る流れみたいのがあるんだなって感じたので、それで彫刻を作るようになって。その後、学校の先生というよりは、専門的に彫刻を勉強したいなと思って『筑波大学 芸術』の彫刻へ大学院で進学して、専門的に彫刻を作るようになって、それでその後ずっと彫刻を作り続けているって感じですかね。」

浅野暢晴インタビュー

ライター柿沼ライター柿沼

「なるほど、凄く可愛い『トリックスター』達が誕生した経緯はどのような感じなのですか?」

浅野暢晴浅野さん

「そうですね、元々ずっと、大学院を卒業してすぐぐらいまでは、抽象の彫刻を作ってて、こうあまり形が無い、本当に丸い形だったりとか、純粋彫刻っていうか、ちょっとある意味難しいというか。」

ライター柿沼ライター柿沼

「見る側がってことですか?」

浅野暢晴浅野さん

「そうですね、なかなか見る人との『接点』みたいのが生まれにくい、なかなか掴みにくいってとこもあるなって思っていたのですが。ある展覧会で『人の形を作る』っていうのがテーマであって。それまでは、人間を作るにしても物凄く抽象的な物しか作ってなかったんで、ここら辺で1回作風を変えたいなぁと思って、結構具象的な感じの、人の形に近い、今のトリックスターに近い3本足のを作ったんですよ。それが最初のきっかけですね。」

ARTのみかた

ライター柿沼ライター柿沼

「実は僕、美術とか見るのが好きなんですけど。正直・・・見方が合ってるのか合ってないのか、分からないとこがあって(笑)なんていうか、どうやってアートを見たらいいんだろう・・・みたいのを、芸術家の方に聞いてみたいと思っていたんですよね、正解というか。」

浅野暢晴浅野さん

「1つこういう見方ですよっていう訳でもなくって。僕ら専門的に勉強しているので、文脈みたいな物の中から見る事も出来るんですけど、あまり別に難しく見る必要もなくって。本当にまぁ・・・入口は可愛いとか、これ好きとか嫌いとかでいいと思うんですよね。うちの妻なんかも、美味しそうか、美味しそうじゃないかみたいな。何か見ててこれ美味しそうだ、甘そうだとか。その人なりの感じ方で見て良いと思うですよね。」

ライター柿沼ライター柿沼

「ほぅ。」

浅野暢晴浅野さん

「本当に好き嫌いとか、まずは難しく考えないで見てみるのがいいと思います。そして、いっぱい色んな物を見てみると、自分の好きな物ってこういうもんなんだなってものが、見えてくるっていうか。なので、まずは入口としては単純に好き嫌いみたいな所で見ていいんだとは思います。」

ライター柿沼ライター柿沼

「うんうん。」

浅野暢晴浅野さん

「その後、この作家が好きだなって思ったら、多分その作家がどんな事を言いたいと思ってるかみたいな事を、ツイッターだったり調べる事もできるんで、それで見てみるとより面白くなっていくのかなとは思いますけどね。何かを考えて、全く無で作ってる人間はいないので、感覚が合いそうだなぁって思う作家がいたら、逆に今度はそこを入口にして行くというか、好きな作家を追っかけて行くと、見方が広がって行くのかなって感じはしますけどね。」

ライター柿沼ライター柿沼

「やっぱり芸術祭などって、いっぱい作品があって。なんていうんですかね『おっ!凄い!』とは思うんですけど、凄い、凄くないとこ止まりというか、今そのレベルですね、なうです。」

浅野暢晴浅野さん

「それでも全然良いとは思うんですけどね。難しく見ないといけない物でもないし。やっぱりある種、1つのレジャーの1つとして、楽しめるっていう事が大事だと思います。ただ、深く、アートって深みがあるというか、その先の物があったりはするんで、そこまで見えてくると面白さがグッと変わってくるっていうか。」

彫刻家の浅野暢晴

ライター柿沼ライター柿沼

「その先みたいです(笑)」

浅野暢晴浅野さん

「映画とかそういう物と近いとは思うんですけど、何か単純にただ見て楽しむってとこもあるんだけど、意外とその映画って前の映画とかの文脈の中で作られたりするじゃないですか。実はこれは引用だったりとか、これがあってこれが作られたりとか、流れみたいな物があって映画とかも作られると思うんで、そういうその前の歴史みたいな物の中の位置づけとして、その先もあったりもするので。」

ライター柿沼ライター柿沼

「あぁー!なんか僕、映画が大好きなんで、何となく腑に落ちた気がします。ちょっと例えがあれですけど、アベンジャーズとかダヴィンチコードとか、普通に1つの映画単体で観ても楽しいですけど、前作だったり、お約束だったり、歴史だったり、宗教的な所とか分かんないと『えっ??』みたいな所ありますね。知識の量でちょっと違う見方が出来るっていう。あぁなるほど、そう考えると知識が必要ってことですね。観る側にもある程度の備えっていうか。」

浅野暢晴浅野さん

「ただ、色んな種類のアートがあって、本当に体験して楽しむって事に特化したアートもあるし。映画もそうじゃないですか、エンターテイメントとして楽しむって映画もあれば、逆に知識が無いと読み解けない難しい映画もあるし。」

ライター柿沼ライター柿沼

「たしかに、ワイルドスピードシリーズ的なのですね(笑)」

浅野暢晴浅野さん

「アートによっても凄く幅が広くあるはずなんで、何かその中でどこを楽しみたいかっていうところですかね。ビエンナーレの中でも多分色んなアートがあると思うんで、そういう意味では広さというか、そういうもんなのかなって気はしますね。」

ライター柿沼ライター柿沼

「そういう意味だと、抽象的な作風からトリックスター君に移行されたのも、僕たち見る側に近づいてくれてるってことですよかね。」

浅野暢晴浅野さん

「近づいてるっていうのもあるし、僕の作りたかった物がどちらかというとそっちにあったというか。抽象的な、マニアックな彫刻の世界っていうよりも、どこか観る人に寄り添って行けるような物の方が自分の作りたい物なんだなって事を、人の形みたいな物を作って、それで気付いたというか。だけど、ただ可愛いっていうだけでも無くて、入口としてそういう物もあるんだけど、何かちょっと怖かったりとか不気味だったりとか、ただ可愛いなってだけにはしたくないなとは思ってます。」

彫刻家のしごと

ライター柿沼ライター柿沼

「僕の周囲に芸術家など全くいないので、日々の生活みたいなものがイメージしにくいのですが、個展などをして、それが売れて収入になるという感じなのでしょうか?」

浅野暢晴浅野さん

「なかなか、それだけでは食べては行けないので、別の事をしながら活動しているって感じですかね。」

ライター柿沼ライター柿沼

「なにかの講師とかってことですかね?」

浅野暢晴浅野さん

「そうですね。別の事で生活の糧を。日本だとほとんどの方が別の事をしながら食べているのかなと思いますけどね。アートだけそれだけでっていうのは難しくて、まぁそれが理想は理想なんですけど、1%ぐらいじゃないですかね、それだけでやってる人は。」

浅野暢晴の横顔

ライター柿沼ライター柿沼

「浅野さん自身の今後の展望というか、プランみたいなものをお伺いしてもよろしいでしょうか?」

浅野暢晴浅野さん

「今、SNSに作品が結構広がっていて、インスタグラムとかツイッターとかフェイスブックとか、今まで活用しなかったんですけど。中之条のときに一回バズって、それで結構いろんな人に知ってもらえて。それまで自分で作っているものって、ある意味マニアックなものを作ってるとか、そんなに好きな人がたくさんいるようなものではなくて、自分が好きなものを作ってる感覚が強かったんですけど。そのツイッターでバズったときに、今まで100人見せて1人好きな人がいればいいぐらいの感じだったのが、100万人とかにぶちこめば、母数が増えると好きな人も増えるっていうか。」

ライター柿沼ライター柿沼

「なるほど、攻めの姿勢ですね。」

浅野暢晴浅野さん

「なかなか展覧会やっても足を運んでくれる人はそんなにいるわけじゃないし。芸術祭などに出品していると、そういうのが好きな人が見に来てくれるんだけど、それ以外の人になかなか広まらない現実もあって。普段は美術館なんか一回も行ったことない人が、ツイッターとかで面白いって思ってくれて、アートとしてっていうよりも、僕の作ったものを、それを見たい、ただ見たいって感覚として来てくれる人が結構いたんですよ。」

ライター柿沼ライター柿沼

「それはいい流れですね。」

浅野暢晴浅野さん

「アートの枠にとらわれないで見に来てくれる人っていうか、なんか変なものを作っている人がいてそれを見たいっていうだけっていうか。アートなんだって思って見に来ると身構えちゃって『どう?』をわからなくちゃいけないみたいな、さっきの話のようなものがあるんだけど。」

ライター柿沼ライター柿沼

「たしかに。」

浅野暢晴浅野さん

「でも、ツイッターで『これ面白そう、これ好きかも。』って思って見に来てくれる人が、結構来てくれるんですね。なんかそうやって、自分の作品をいろんな人に届けていくっていうような感じで、それがすごく面白いし嬉しいんですよね。そして、実は九州に住んでてとか、沖縄に住んでてとか、作品を見に来られない人も結構いる事を知って。じゃあ送っちゃえばいいやって。」

ライター柿沼ライター柿沼

「送る!?」

浅野暢晴浅野さん

「はい、郵送しちゃって。2週間くらいホームステイっていう感じで、作品をホームステイさせて楽しんでもらうっていう、『旅するトリックスター』というプロジェクトを、今年からずっとやってるんですよ。」

  • 神秘的なトリックスター

ライター柿沼ライター柿沼

「えー(笑)面白い(笑)一般の方にってことですか?」

浅野暢晴浅野さん

「そうですね、1対1だからあんまり効率はよくないんですけど。ツイッターで募集して、行った先で作品を持っていって、そこで写真を撮ったりとか。ツイッターなどで旅の様子が見られるので、ハッシュタグ『#トリックスター親子』と検索してみてください。」

ライター柿沼ライター柿沼

「すごい(笑)検索してみます!」

浅野暢晴浅野さん

「作品を展示してても、作品に触れられないじゃないですか。だけど、送って到着したら、自分の手で持つしかないから、もう触るしかない。みんな丁寧に触ってくれるんですけど、色んなところ置いたり触ったりしてくれて。その触れたりって事も含めて、彫刻って意味があるっていうか。それも含めて立体の面白さだろうなって気がするので、そういう活動はもっとどんどんやっていきたいなって思いますね。」

ライター柿沼ライター柿沼

「面白いですね!」

浅野暢晴浅野さん

「すごい送った方にも好評だし、みんなタグつけてツイッターにアップしてくれて。それを見た人が『これ何?』って感じで少しずつ広まっていくというか。いかに自分の作品をただ展覧会をやってみせて広げるってことだけでなくて、もっと積極的に自分からアタックしていくというか、それが面白いなって、これからも積極的にやってこうかなって思ってます。」

彫刻家の笑顔

ライター柿沼ライター柿沼

「いいですね!」

浅野暢晴浅野さん

「ただ、最終的には現場に作品を見に来てもらうことが目的だし、途中のツールとしてツイッターなどを使っているので、そこだけが目的にならないようにしなくちゃなって、ちょっと気をつけながらやってますね。」

ライター柿沼ライター柿沼

「たしかに(笑)ツール優先になってしまうとあれですよね。ただ、僕みたいな素人には、わかりやすい入口がいっぱいあったり、仕掛けがあった方が楽しいので、芸術家の方のそういったアプローチは、とても素敵だなと感じます。また、トリックスター君に会いに足を運びたいと思います。」

浅野暢晴浅野さん

「ぜひ、遊びに来てください。」

ライター柿沼ライター柿沼

「本日は、ありがとうございました。今よりも気軽に美術館などに行ける心境になれた気がします(笑)さらなるご活躍を期待しております。」

浅野暢晴浅野さん

「ありがとうございました。」

取材・文/柿沼博基
撮影/柿沼博基

関連情報


彫刻家 浅野暢晴
ホームページ
http://asanonobuharu.mongolian.jp/
twitter
https://twitter.com/asanonobuharu
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