一見、なぜこんな所にと思ってしまうような畑のつづくエリアに住宅兼お店をオープンさせた小林さん。お店に入ると、シンプルな空間に小林さんセレクトのおしゃれな古着や子供服、日用品などが並んでいます。
オンライン販売はしておらず、ホームページやSNSをみて、深谷市内だけでなく、県外からも服好きのお客さんが足を運ぶそうです。そんなお店を開くまでの道のりや、楽しい街にしたいという思いから始まった街づくり「花園プロジェクト」のお話など、挑戦し続けるLiFEを伺ってきました。
古着に興味を持ったきっかけ
ライターゆる
「おしゃれな古着屋さんがあるなーと以前から興味があったのですが、noteを拝見して、お店や街に対して様々な思いで活動されているのを感じて、お話伺えるのをたのしみにしていました。本日はどうぞ宜しくお願いします。早速ですが、お洋服はいつから好きだったんですか?」
小林さん
「高校生の頃です。友達と買い物に行くようになってからですかね。」
ライターゆる
「その頃から将来はお洋服に関わるお仕事がしたいという思いだったのですか?」
小林さん
「それまで小学校から高校までサッカーしかやって来なかったので。高校出るときに進路をどうするかと考えたときに、とりあえず好きな事を仕事にしたいなーと思ったんですが、サッカー以外に好きな事が洋服か釣りくらいしか無かったんです。釣りを仕事にするのは無いかなーと思って(笑)。とりあえず洋服の専門学校に行っとけみたいな感じで通い始めました。」
ライターゆる
「どんな学校だったんですか?」
小林さん
「最初に行った学校は販売ビジネスの専攻で、販売員やバイヤーになるような事を学んでいたんですが、月に何度か作る授業があって。そういうのが面白くて、今学んでいる事より、一通り作れるようになった方が服を極めるには強いなと思って、別の学校に通い直しました。」
ライターゆる
「別の学校に転入とは、思い切りましたね!」
小林さん
「それは夜間の学校だったのですが、その頃好きで通っていた服屋さんに仕事を紹介してもらえて。昼間は生地の会社で働いて、夜学校へ行って、学校が終わると何故かその生地屋さんに紹介してもらったうどん屋さんでアルバイトをするという生活をしていました。」
ライターゆる
「学校に通いながら、バイトを掛け持ち!学生ならではの忙しさですね。」
小林さん
「専門学校を卒業してからは、地元の縫製工場で働き始めたんです。それから自分で服を作り始めるんですけど、全然ビジネスの事とか考えてないから作っても作っても儲からないんです。一週間くらい下北のギャラリーを借りて展示即売みたいな事をやっていたんですが、やっていけないんですよね。」
ライターゆる
「好きな事を仕事にするのって難しいですね。」
小林さん
「それでどうしようかなーと考えていたときに、行田の染色工場で人を募集していたんです。染色に興味があったのでそこに入りました。そこでは営業と現場をやっていました。自分で作って、お客様に紹介するのが楽しすぎてはまっていたんですが、保守的な会社のやり方と、新しくしていきたい自分の思いが衝突して、やりたいなら自分でやるしか無いと思いました。」
ライターゆる
「そこからこちらのお店を立ち上げたんですか?」
小林さん
「専門に通っているときから、デザイナーになるかお店を出すかというのは最終目標にありました。売り上げの基盤となるものがあれば、服を作って売ることが出来ると思って、古着などを売りながら、服を作る事を考えました。お店をやるにあたって、接客には苦手意識があったんですが、無理矢理やってみようみたいな感じでやってみたら、めちゃくちゃ勉強になりました。やって良かったと思います。」
ライターゆる
「それはお客さんとのコミュニケーションが難しく感じていたという事ですか?」
小林さん
「そうですね。自分もお店に行ったときに打ち解けるまでに時間がかかるんです。話したら仲良くなりたいけど、、みたいな曖昧な境界線があったので、自分がそっち側になるというのが想像できないし、いやだったんです。でもやっていて思ったのは、そういう人だから出来る接客があると思って。そっちに振り切ったら自分なりに出来たのかなという気がしています。」
ライターゆる
「確かに、お店での店員さんとの距離感って難しいですよね。そこをポジティブに捉えられたのってすばらしいなと思いました。今ではネットで服を買う人も多い中で、このような田舎の土地でオンラインショップもないという事ですが、どんな思いがあるのですか。」
小林さん
「オンラインショップについては、扱っているのが古着だから同じものはないし、サイズもわからない、状態も様々なので、写真で伝えられる事は全てではないんです。例えば新品の白Tで、既に持っているものを買い足したいという事ならオンラインでも良いと思うのですが、古着をネットで買うというのはシビアかなと思ってやっていません。」
ライターゆる
「それは納得ですね。一方で、こちらにいらっしゃるお客さんはネットで情報みて来られる方が多いのかなの思うのですが、ネットと場所とのバランスって大事になってきますね。」
小林さん
「そうですね。オンラインからは遠ざかっているようで、ネットに託している部分もあります。お客様はネットで知ってくれた方がほとんど100%だと思うので、ネットとの向き合い方、頼りすぎないバランスが難しいですね。コンセプトが、昭和のネットがなかった時の買い物の感じを残したいというのがあるので、そこと上手くつきあって行くバランスをとっていきたいですね。昭和の八百屋をコンセプトにしてるとはいえ、レジはiPadだし(笑)。今の時代と、デジタルが主流になる前の時代の良いところをうまく融合できれば良いと思います。」
ライターゆる
「面白いですね。確かにネットは便利ですが、お店で服を手に取って選んで、人を介して買い物をする楽しさってありますよね。」
花園プロジェクトについて
ライターゆる
「街づくりとして、花園プロジェクトの活動もされているという事ですが、どのようなきっかけだったんですか。」
小林さん
「話の根本て何だったんだろうと思うと、東京からこっちに帰ってきたときに、休みの日にする事がないなと思って。楽しいスポットがいっぱいあったらいいなと思うんですけど、待っていても出来ていくわけじゃないじゃないですか。それで、自分でお店始めたんだったら、会社員じゃないし自由だから、自分たちでできないかなという所から、協力してくれる人がいないかと声を出してみたら、一緒にやってくれる人が何人かいたので。僕一人だったら何一つ作れないんですけど、みんなでやったら出来ないかなーみたいな。結果駄目だったとしても、挑戦はしていた方が楽しいので。大きい目標があってそこにむかって行くのは楽しくもあるし、一つでも何か作れたらという感じです。」
ライターゆる
「街の中をセグウェイでまわれるようにしたいという案など拝見して、楽しそうだなと思いました。」
小林さん
「海外だったらキックボードが主流ですけど、ああやって、街の中を楽しんでまわれる交通手段がある事は大きいなと思いますね。交通規制とか法律上の問題は色々とあると思うんですけど、市の人とか行政とかと協力して、長いスパンで実現していけばいいなと思いますね。まずは駅の周りとかならあり得るかなと思って、そこから広がっていく可能性もありますしね。」
ライターゆる
「ぜひ実現してほしいです!」
仕事と家族の関係について
ライターゆる
「好きな洋服を仕事にされていて、お店がお住まいと一体になっているという事で、仕事とプライベートの距離が近いのかなと思うのですが、家族と仕事が互いに影響しあっているなと感じる事はありますか。」
小林さん
「そうですね。子供が生まれるタイミングだったから、住めるところでお店できたらいいねという事で探してたんです。奥さんがずっと子供の面倒をみてくれてるんですけど、やっぱりずっと一人だと大変なので、僕も協力出来る環境を選んだんですけど、そうするとずーっと一緒にいる事になるので、それはそれで良くない事もあれば良い事もあって大変です(笑)。でも、自分一人でずっといると考え過ぎてしまったりとか、考える時間が長いんですけど、そこで嫁さんが一言いってくれたりすると、自分が考えてどっか行っちゃってたのが現代に戻ってくるというか、ああそっかと思えたりするので。良い事、悪い事ありますね(笑)。」
ライターゆる
「サラリーマンのお父さんだったら、仕事してる姿を観る機会ってあまりないと思うのですが、お子さんにとっても仕事場が身近にあって、それこそ昔の商店の感じに近いのかなと感じました。」
小林さん
「確かに、子供に説明するのも難しくて。パパはお仕事だよと言っても下にいるし(笑)。仕事仕事といっても、土日とか家にいるときは子供も下におりてきて遊んで遊んでっていうんです。お仕事だよっていっても理解されない。その辺は難しいですね。子供にとっても良い事なのか、悪い事なのか分からないですけど。お客さんにも協力して貰いながらやってますね。」
ライターゆる
「仕事に対する感覚とか、人との関わりとか、自然と感じる事があるでしょうし、お子さんにとっても面白い環境なんじゃないかなと思います。」
小林さん
「やっぱり自分で何かやってる人の子供って、ずっと親の姿を見てきて、それが将来の選択肢の一つになる事もあるのかなと思いますが、とにかく好きな事を見つけてやって欲しいなと思いますね。」
ライターゆる
「そうですね。お店やプロジェクトの発展と共に、お子さんの成長もたのしみですね!本日は興味深いお話が伺えてよかったです。貴重なお時間どうもありがとうございました。」
小林さん
「ありがとうございました。」
撮影/柿沼博基