夜更かしするのが先天性の性格だからか、たくあんはいつも仕事を後回しにして、夜に仕上げることがある。
ふと、窓の外には黄色のライトがチラリと光るのが見える。はるか遠くの方でバイクがうなっている。コオロギやスズムシが鳴く静かな世界。
この真っ暗な景色が好きなんだよ。と窓の外に目を移しながら想いを馳せつつ、温かいココアをすする。
ヒュウと窓の外から冷たい風が吹く。
「ハクショョイ」たくあんはくしゃみをすると、右手のココアが波を立てる。
そして、少しこぼれる。
「あっつ!」とネズミがびっくりするほどの大きな声をあげる。
ココアのカップを机に置いたら、スウェットのパンツを脱ぎすてる。
「あぁ、もう、めんどくさいな。」たくあんは一人呟き、スウェットを履き替える。
ふぅ、と深呼吸をしながら机に向かうと、溜まりに溜まった仕事の山。
ここまで終わったけれど、あとはどこから手をつけようか。
明日の朝までには仕上げなくちゃ、と思えば思うほど違うことをしたくなる。
やらなくてはいけない、しかし、やりたくない。いや、やらなくてはいけないからこそ、やりたくない。机に向かったはいいものの、もうやる気が削いじゃって、鼻にペンをくっつけてはキュッと息を吸い込む。
2秒もしない間に無慈悲に落ちるペンを見て、今の仕事は合わない。と早速結論づける。
耳をすませば隣の部屋からグォグォといびきが聞こえる。
ランダム再生で流れる曲は「カントリーロード」だ。
カントリーロードに思いを馳せる。俺の故郷は。
国道1号線のマクドナルドが見えるところ。電車も車もラジオもテレビもある。
「むしろ今の暮らしが「故郷」だよな」とたくあんは呟き、部屋を眺める。
そろそろ喉越しのいいものを飲みたいな。部屋のドアを開ける。冷蔵庫まで歩く。
カントリーロードに思いを乗せて、あぁ、車もラジオもテレビもない生活。
父ちゃんと母ちゃんに縛られない生活は、情報にも縛られない自由な生活だった。
「仕事が終わったら戻るよ。」頭の中の母ちゃんに電話をする。
そのとき、仕事のアイディアがひらめいた。
著者紹介
- 名前
- たくあん
- コメント
- アラサーだけど自覚したくない大きな男の子。
人生一度きり、やりたいことを極めようと、仕事の合間に物書き、腹話術をやっています。
長編、作るぞ〜!