全国の魅力的な本屋さんを紹介する「全国 旅をしてでも行きたい街の本屋さん」にも、埼玉県で唯一掲載されたとっても雰囲気の良い本屋さんです。
そんな、生涯を費やしたいと思える「本屋」という仕事に巡り会った、ひとつのLiFEにインタビューさせていただきました。
須方書店が生まれるきっかけ
ライター柿沼
「本日は宜しくお願いします。いやぁ、この沢山の古書達と、建物の歴史感、なんだかすごく味があっていいですね、須方書店をはじめられて何年ぐらいなんですか?」
須方さん
「はじまったのが、正確に言うと、2012年3月17日ですね。その時の店名が「円の庭」という名前で、その時は僕と入江さんという方と一緒にはじめて、2014年の7月ぐらいに「須方書店」に店名を変えて、引き継いだ形なので6年目ですね。」
ライター柿沼
「入江さん・・・、もしかして映画監督のですか?」
須方さん
「映画監督の入江悠さんのお父さんの、入江明さんですね。」
ライター柿沼
「おー、すごい、映画好きなのでちょっといま鳥肌でした。どういったつながりで、入江さんと一緒にやろうということになったのですか?」
須方さん
「僕も映画は好きですね。実は、中学1年生の時に不登校というか、登校拒否していたんですよ。」
ライター柿沼
「へぇ、不登校。」
須方さん
「その頃から、すでに映画や本が好きで、「家にこもってちゃあれだから・・・。」ということで、16歳の時に知り合いの伝手で、深谷シネマの竹石館長を紹介されて、映画館でボランティアをやりはじめました。」
ライター柿沼
「ほぉぅ、深谷シネマで。」
須方さん
「その流れで、18歳の時に入江さんと出会って、一緒にやろうとお話し頂いて、今に至ります。」
不登校だった青春時代
ライター柿沼
「その18歳の時に入江さんに出会うまでは、学校に通わず、ボランティアのみをやっていたのですか?」
須方さん
「そうですね、週に1度、日曜日に深谷シネマのボランティア行って、それ以外の日は図書館行って本を借りて読んだりしてましたね。それと、当時スクールカウンセラーの先生がいて、それに週3日行けば出席扱いにするって事だったので、教室行かないで1~2時間行ってました。」
ライター柿沼
「その、なにか不登校になるきっかけみたいなものはあるんですか?よくあるイジメ的なとか・・・。」
須方さん
「正直、きっかけが無いですね。自分が分析ができてない部分はありますけど、これといった理由が無いんですよね。特にイジメなどもなく、うまく言えないんですけど、味をしめちゃったというか・・・。」
ライター柿沼
「ズル休みしたりしてたら、どんどん面倒になって・・・みたいなことでしょうか?」
須方さん
「そうなんですよ、何ヶ月も行かないと、行きにくくなっちゃって。なんか、そこが一つの後悔というか、もっとカッコイイ理由があったらよかったなぁと・・・(笑)」
ライター柿沼
「カッコイイ理由・・・それ、すごいわかります、その気持ち(笑)実は、僕もまったく同じような感じの青春時代を過ごしていて(笑)いやー、奇遇だなぁと。」
須方さん
「あっそうなんですか!?(笑)」
ライター柿沼
「そうです、そうです。いやー、本当に似すぎててビックリしました(笑)僕は昔から運だけはよかったので、色々な場所で出会い・経験に遭遇して、今はどうにか人間のモノマネできるようになりましたが。須方さんも、竹石さん、入江さんとの出会い、良縁に恵まれていますね。」
須方さん
「本当にそうですね、それがなかったら、今も引き篭もってるかもですね(笑)」
ライター柿沼
「どちらも結構な年の差がありますが、最初は緊張されたりしたんですか?」
須方さん
「そうですね、年の差もありますし、当時の僕は人と全然喋ってなかったですね、まち遺し深谷の役員もしていた、社交的な入江さんに嫉妬をおぼえたり(笑)」
ライター柿沼
「嫉妬!?(笑)」
須方さん
「俺これできないなと(笑)」
ライター柿沼
「なるほど、本屋さんですと、接客の要素があると思うんですが、苦手意識はあるのですか?」
須方さん
「元々は人と喋るのは得意ではなかったたんですけど。「本」を通して人と喋ってるうちに、今はお客様との会話を楽しめるようになりましたね。あとは今考えると、入江さんが色々と工夫して接してくれてたのかなと思います。」
ライター柿沼
「工夫してといいますと?」
須方さん
「入江さんに一緒にやらないかと誘われた時に、「じゃまずは神田にいかないとね。」と言われたんですね。あっそうですねと話をして、「じゃ連絡先を教えるから電話してきて。」って言われたんですよね。僕があの時に電話していなかったら、今はないかなと思います。入江さんは「じゃ一緒に行こう。」って手をひかないんです、そこで相手に委ねるんです。」
ライター柿沼
「おー、かっこいい。」
須方さん
「その当時は、全然喋れないですし、電話なんてもってのほかなんですね。しかも、入江さんは初対面は怖いおじさんでしたから・・・(笑)今、思うとそうですね、そこで僕、勇気をだして電話して、この日あいてるんでどうですかと。」
ライター柿沼
「すごい、ちゃんと試練みたいなものを設けて、一歩踏み出すという・・・、入江さん大人ですね。」
働くということ
ライター柿沼
「紆余曲折あった青春時代を経て、入江さんからの幾多の試練を乗り越えて、今こういったお仕事をされていて、やってく上で大事にしてることはありますか?」
須方さん
「好きな事をやろうって感じですかね。」
ライター柿沼
「好きな事をできるって、ある意味、特権ですよね、いいなー。最近、色々インタビューさせて頂いていて、「やれること」と「好きなこと」がイコールになってる人って、キラキラしてるんですよね。」
須方さん
「ただ、本屋は大変で、都内とかだと夜はコールセンターの仕事をしながら本屋やってるって人も結構いますね。」
ライター柿沼
「都内だと家賃とかすごそうですね、経費が多い分それだけ売上がないと厳しいですよね・・・。なんというか、お金儲けではないってことですよね、本が好きっていう。」
須方さん
「その方は、その本屋をやりたいが為にそういった生活をされていますが、多分それを苦には思ってらっしゃらないんでしょうね。僕もそんなにすごく儲けている訳ではないのですが、最近思うのはハードル下げてけば、普通の人が普通に思うことが、すげぇハッピーに思えるって感覚はありますね。」
ライター柿沼
「たしかに、というか「普通」って今、結構ハードですよね。僕もどうにか「普通」になろうと頑張ってますが、次から次にお金がかかるし、親ってすごいなぁ、感謝だなぁと最近思います。その上、色々と余計な迷惑をかけてますし。」
須方さん
「そうですね。それは僕も思いますね。」
須方書店の未来
ライター柿沼
「なんだか、ちょっとしんみりしちゃた感あるので。ちょっとテンション上げて、最後に須方書店の展望をお聞かせください!」
須方さん
「やっぱり、理想としては生涯続けていきたいですね。ま、場所を変えるかもですけど。」
ライター柿沼
「移転される可能性もあるのですか?」
須方さん
「土地の問題等もありますし、あと建物も大正時代の古いものですから。」
ライター柿沼
「もし移動するのであれば、深谷市内でですか?」
須方さん
「そうですね深谷でやりたいですね。あと、お店をやっていて楽しい部分は、一つ自己満足の部分が大きいんですよね、すごく嬉しい。それを、どう周りに還元するかというか、何か一つもうちょっと、本屋としての公共性を高めたいというのはありますね。」
ライター柿沼
「なるほど、何かアイデアはあるのですか?」
須方さん
「んー、正直、ないです。まだ試行錯誤中です!(笑)ただ、最近「全国 旅をしてでも行きたい街の本屋さん」という、全国の本屋さんを紹介する本に掲載していただいたので、少しづつ広がっていければいいなと思います。」
ライター柿沼
「えー、すごいじゃないですか、その本はどこで買えるんですか?」
須方さん
「普通にお近くの書店でも取り扱っていると思いますし、うちにも置いてあります、こちらですね。」
全国 旅をしてでも行きたい街の本屋さん
[本の内容]北海道から沖縄まで、日本全国にある個性豊かな“街の本屋さん”150店以上を紹介。著者は各地の書店に詳しい方々が担当し、すべてのお店の外観写真を掲載し、最寄りの駅は「出口」まで紹介。 実際に持ち歩くことを想定し、より実用的な工夫されています。[著者]荒井宏明、 和気正幸、佐藤実紀代、イソナガアキコ、田端慶子、 アイデアにんべん、ユニットことり会。
[その他]出版社:ジービー
発売日:2018/8/21
ライター柿沼
「わー、オシャレな本屋さんがいっぱい!しかも埼玉で唯一の掲載じゃないっすか!すご!」
須方さん
「僕も嬉しかったです。」
ライター柿沼
「これから、どんどんご活躍される事を期待していますね。さらに有名になっても邪険にしないでくださいね(笑)本日は、インタビューありがとうございました。また、本買いにきますね。」
須方さん
「はい、いつでもお待ちしています。」
撮影/柿沼博基
関連情報
古書・古本 須方書店
- 営業時間
- 11:00~18:00(夏)
11:00~17:00(冬)
定休日:火曜日
- 住所
- 〒366-0825 埼玉県深谷市深谷町9-12
七ッ梅酒造跡地 深谷シネマ同敷地内
- お問い合わせ
- 080-3121-1851
- ホームページ
- 須方書店HP