宿題も思っていたほどは多くなく、娘は早々に、ポスターや読書感想文を仕上げていた。
けれど、このようなご時世、宿題が終わったから自由に遊びに行けるかというと、そうでもない。
春に行かれなかった旅行を、夏休みに行くことができたら…と考えていたが、状況から判断して中止することにした。
色々な考えがあるとは思うけれども、我が家では、「不安を感じながら行くよりも、安心して行かれるようになってからにしよう」と決めた。
そんな中、毎日をどのように過ごしているかというと、娘は庭作りを楽しんでいる。庭といっても、うちはアパート暮らし。小さなベランダしかない。そこに置いてある植木鉢(数年前に、アサガオを育てたときに使ったもの)が、娘の庭だ。
春の臨時休校期間中に、娘がタンポポの綿毛を採ってきて、種を植えたもの。タンポポの花は時期を過ぎて、もう咲き終えてしまったが、その後もどこから種が飛んできたのか、様々な植物が育ち盛りでにぎやか。
道を歩いていれば、「雑草」と思って気にも留めないような植物に、毎日水遣りをして、大切に育てている。
その中でも、立派に大きくなったエノコログサ(ねこじゃらし)の穂の部分は、息子の大のお気に入り。窓を開けては、お姉ちゃんの育てたエノコログサに触れて、そのフサフサしたさわり心地を楽しんでいる。
そんな二人の姿を見ていて、気づかされる。道端でよく目にする草を、わざわざ種から育ててみようなんて、考えてみたこともなかったなぁ…と。
あまりに、いつも当たり前のように見ていたから。
今もまだ、色々なことが、当たり前ではなくなってしまった状況が続いている。だからこそ、その大切さをより強く感じている日々なのだと、改めて感じた。
小さいながらも可愛い庭作りを楽しむ娘とは対照的に、息子は自転車に夢中だ。これまでは、いつもお姉ちゃんのピンク色の自転車を借りて乗っていた息子。ピンクが悪いというわけではないけれど、やはり気兼ねなく乗れる、自分専用がずっと欲しかったらしい。ついにこの夏、息子用の自転車を買った。
息子は、黒のスポーティーな自転車を手に入れてからは、毎日のように乗りたがる。自転車で出かけるというよりも、自転車に乗ること自体が目的のようだ。
熱中症に気を付けながら、まだ明るい夕方に、パパと一緒に走りに行く。
我が家の夏の楽しみの一つ。毎年、市内の夏のイベントでもらっていたカブトムシ。
今年は様々な催しやお祭りなどが中止や縮小されているので、この夏のカブトムシは正直諦めていた。うちの子達には、早起きをして昆虫採集に行くほどの気力はない。けれど、お友達の家から、思いがけず数匹もらえることになった。
こうして我が家でも、立派な雄のカブトムシの飼育が始まった。
部屋の中には、腐葉土や昆虫ゼリーなどの匂いが混ざったような、独特の空気を感じる。
なんだかやっと、夏が来た!という気がする。自然の中には、いつもと変わらないものがたくさんあって、その存在にホッとする。
ニュースなどで、日々流れてくる情報を追っていると、時々疲れてしまう。
そんな時は、身近な楽しさ、季節の変化に敏感になってみる。遠出できない分、近くにあるものの魅力を再発見、というのも素敵かもしれない。
三密を避けた場所ということで探していたら、新たなお出かけ場所を見つけることもできた。まだまだ近くに魅力的なところが、いっぱいあるんだと、嬉しくなった。
色々な不安を一先ず忘れて、自宅では、押し入れから出てきたカルタやトランプ、カードゲームも大活躍中。
気が付けば、意外と、暇で退屈したり、やることがないという時間が見つからない――。
みんなは、どんな夏を過ごしているのだろう。休み明け、学校でお友達と再会し、お互いの夏休みの思い出を語り合えば、また新たな夏の過ごし方を知ることができるかもしれない。
夏休みは、残りわずか。暑い夏は、あっという間に過ぎていきそうだ。
著者紹介
- 名前
- 円野こいし
- 性別
- 女
- 年齢
- 昭和生まれ
- 出身
- 東京都
- コメント
- 夫、小2の娘、年長の息子と熊谷に住んでいます。エッセイは初めてですが、子どもたちとの日常を綴っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。